barbara celarent
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"barbara celarent"
 は次の詞の冒頭に由来します。

アリストテレス論理学の妥当な推論形式を暗唱するために考案された詞です。
 

Barbara celarent darii ferio baralipton
Celantes dabitis faspesmo frisesomorum
;
Cesare campestres festino baroco; darapti
Felapton disamis datisi bocardo ferison.
この暗唱詞が最初に現れるのは、
William of Sherwood (1200/1210-1266/1272)
 の教科書 Introductiones in Logicam においてだとされています。


現代のスコラ学者による次のような本もあります(未見)。

Thomas Gilby, Barbara Celarent: A Description of Scholastic Dialectic, London, Longmans & Green, 1949. (303 p.)



アリストテレスの論理学で文として認められるのは次の4種で、それぞれ A文、I文、E文、O文 と呼ばれます。

これらを定型文 ( categorical sentences ) と言います。

現代的にいえばアリストテレスの形式言語における論理式 (well-formed formula) ということになります。
 

 
 
  • A文:すべてのSはPである
  • I 文:或るSはPである
  • E文:すべてのSはPでない
  • O文:或るSはPでない
A,I,E,O は、
「私は肯定する」を意味する "Affirmo" の最初の二母音 "a","i"、
「否定する」を意味する "nego" の最初の二母音 "e","o" に由来します。

 

 
アリストテレスは、これら "S" と "P" を含む文が結論として導かれるのは、何か他の媒介項(中項) が 主語 "S"(小項)と 述語 "P"(大項)とを関連づけることによってであると考えます。

中項を "M" とすれば、それが関連づける仕方は次の三通りです。そして、これらの並べ方によって推論の格が生じます。「SはPである」は主語・述語の順番が変わって “P−S”と表記されています。

 
  • 第1格 P−−S
  • 第2格 −P−S
  • 第3格 P−S−
格によって項に使う文字は異なりますが、同じ文字を使えば次のような具合になります。

最初の前提は大項 (P) を含んでおり大前提と呼ばれ、二番目の前提は小項 (S) を含んでおり小前提と呼ばれます。


大前提

小前提

結論

第1格

P−M

M−S

├ P−S

第2格

M−P、

M−S 

├ P−S

第3格

P−M

S−M

├ P−S

これらの " − " 部分に "a", "i", "e", "o" を代入することで、それぞれAIEOの各文を表します。

可能な推論形式は、それぞれの格で4の3乗通りあることになります。この中から妥当な形式として選びだされたものが暗唱詞に表されています。

 

1. 暗唱詞で最初の三母音は大前提、小前提、結論の文の形(A, I ,E, O) を示す。

2. 暗唱詞の最初の二行は第1格、三行目の baroco まで第2格、残りは第3格。


(第1格のうち上記暗唱詞イタリック部分は、大前提と小前提の位置を置き換えた上で後に第4格とされる型式 (modus) を示します。
アリストテレスはそれらの妥当性を認めていますが型式として認めていません。これらの型式への導入は、アリストテレスの弟子テオフラストスによるとされます。)

   第4格    M−S、 P−M ├ P−S

1st, Barbara celarent darii ferio

4th
, baralipton
Celantes dabitis faspesmo frisesomorum
;

2nd,
Cesare campestres festino baroco;

3rd,
darapti
Felapton disamis datisi bocardo ferison.

 

 

 

ですから、barbara は、

    AaB, BaG├ AaG

という型式を示しています。例えば、

すべてのB(動物)はA(生物)である
すべてのG(人間)はB(動物)である
故に、すべてのG(人間)はA(生物)である

celarent は、

    AeB, BaG ├ AeG

を示しています。例えば、

すべてのB(鳥)はA(人間)でない
すべてのG(カラス)はB(鳥)である
故に、すべてのG(カラス)はA(人間)でない
尚、アリストテレスは、1格で妥当な形式を定め、他の格については文の変形を通じて1格の妥当な推論形式に還元することで、妥当性を証明します。暗唱詞はそのことも教えています。

Barbara celarent darii ferio [4格省略]

Cesare campestres festino baroco;

darapti Felapton disamis datisi bocardo ferison.

3. 先頭の子音 (b,c,d,f) は、その型式が同じ先頭子音をもつ第一格の型式 (barbara, celarent, darii, ferio) に還元されて、その妥当性が証明されることを示す。

4. "s" を含む文は、還元の過程で単純に換位される ( simpliciter converti )。
"s" の直前母音に対応する文が換位される。
"s" が2回出現する場合は2回換位される。

5. "p" を含む文は 、還元の過程で付帯的に換位される ( per accidens converti )。
"p" の直前母音に対応する文が換位される。

6. "m" を挟む二母音に対応する二つの文は、大前提、小前提の位置が還元の過程で置き換え ( metathesis ) られる。

7. "c" が続く母音が示す文の前提は、
還元の過程で、その文の代わりに、
結論と矛盾する文が前提になることを示す
( duci ad impossible )。

*換位規則(文の変形規則)

    単純換位
    AiB から BiA またその逆
    AeB から BeA またその逆

    付帯的換位
    AaB から BiA(アリストテレスの還元ではこちらのみ用いられる)
    AeB から BoA

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